『失われた時を求めて 抄訳版?』 マルセル・プルースト

 ちょう有名な古典に挑戦!と思ったが長いので、何はともあれ抄訳版を読むことにしてみた。プルースト1871年生まれ(1922年死亡)のフランス人で、自伝的な要素が強い作品らしく、当時の社交界・サロンがよく出てくるらしい。そうした舞台を背景に芸術志向の強い主人公が様々な人物に出会いいろいろな体験をするといった内容のようだ。
 本書はそれぞれのパートの重要と訳者が判断した部分を抜き出し、解説と共に並べるといった形式になっている。だから基本的には自分のような初心者にも(当然ながら)筋が把握しやすく出来ている。本文付きの解説書、といってもいいと思う。文章の方は長く観念的でなかなかの難物。絵画や音楽に関しての考察が出てくる部分は時代背景含め興味深いのだが、一読しただけではなかなか意味が取れない(再読しても難しそうだが)。時間や記憶についても大きなテーマとなっているがそうした部分もやはり難しいが、どういったイメージが作品中で重要であるか解説されるので読み進めるのが辛いということはそれほどない。恋愛に関する観念的な記述が続くと退屈してしまうが(笑)。
 多くの名作がそうであるように多面的な魅力のある作品なのだろうということがおぼろげながら見えてくる。風俗習慣の部分(年始まわり、お年玉という訳があるが、そういう風習はあったの?)などには素朴な疑問がわいてきたりして、単なる小説好きにも幅広い楽しみを与えてくれそうな作品のようだ。