2011年の6冊

 ふと思い立って。ベストSF企画とかツイッター文学賞とか参加してるけど、とりあえずブログの年間総括ということで順不同に2011年の6冊を挙げとく。(5冊にしぼれなかった)

○『ミステリウム』 エリック・マコーマック (国書刊行会)
 とある田舎町で起こった奇怪な現象を描いたミステリ。荒涼とした風景は作者の故郷スコットランドを思わせる。真相とは何か犯罪とは何かという問いかけに移行していく過程が楽しい。





○『ファン・ホーム』 アリソン・ベクダル (小学館)
 日本海外を問わずコミックは詳しくないのだが、これは素晴らしかった。順不同なんだけど注目度がやや低い印象があり、特にこの本をベストして押したい。フィクションに取り憑かれた人間の悲劇としても読める、文学作品。元来古典に疎い自分が『失われた時を求めて』を今読んでいるのはこの本に刺激を受けたから。コミックということで矛盾してしまうのだが、小説部門のベストランキングに入れて欲しい本だ(読んだ方はいわんとすることがわかるはず)。


○『P-FUNK』 河地依子 (河出書房)
 もうねえ、すごいです。本国でもこんな本つくれるかどうかわからんぞ。無限にに出入りするメンバー、ジャンルレスの音楽性、ふざけたふりして深遠な歌詞などなど異形の音楽集団P-FUNKをとらえることなど不可能と思われたが、長年の地道な研究が本書に結実。ファンのバイブル。





○『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』 ジョノ・ディアス (新潮社)
 もちろんこれははずせない、2011年を象徴する一冊。映画‘復活の日’の話をはじめオタクねた満載。腹を抱えて笑っていると、怖ろしいドミニカの歴史が浮かび上がってくる。我々にとっても対岸の火事ではない。震災後に、より身につまされることになった。





○『11』 津原泰水 (河出書房)
 
 珠玉の、などという言葉は使い古されているが真にその言葉にふさわしい短篇集はめったに登場するものではない。文章、アイディア、独自性どれをとっても一級品。『五色の舟』『土の枕』はもちろん必読として、他も傑作ばかり。





○『乱視読者のSF講義』 若島正 (国書刊行会)
 若島先生の評論が大好物なSFファンには待望の本。精緻な分析の影にある小説を愛する熱狂的な読者としての顔に共感を覚える。あ、もちろん先生のような高度な読解には千年たっても足元にも及ばないけど。