『夜の旅その他の旅』 チャールズ・ボーモント

 異色作家、という言葉のイメージにぴったりの作家だろう。多ジャンルが混在した作品、TVシリーズ《トワイライト・ゾーン》の中心脚本家、アンソロジストでもあり、精力的な活躍の最中に若年性アルツハイマーでわずか38歳で逝去という劇的な生涯。
 本書そのものは現在では異色というよりも一般小説よりの短編集として位置づけられるか。アイディアや表現はあくまでもシンプルで鬼面人を驚かす要素はないが、巧みな導入、歯切れの良い文章と展開(訳が良いのかもしれない)、意外かつ時にブラックで時に苦く時に切ないオチの粒ぞろいの作品集でサクサク読める。水分過多にならない程よい情緒があり、日本でも幅広く受け入れられそう。
 念願の素晴らしいデビューを飾ることになった闘牛士だが・・・「黄色い金管楽器の調べ」、上司との接待ハンティングの顛末を描いた「鹿狩り」、ドサ回りの手品師のやるせない素顔「魔術師」、ジャズもの「夜の旅」あたりにその辺の特徴が現れている。タイトル作である「夜の旅」は集中ベストと言っていい出来だが、背景にジャズファン特有の頑なさが感じられちょっと違和感が残る。個人的には、詩作に専念したい変な大統領と発明家の話「かりそめの客」、エロマッドサイエンティストのすっとぼけぶりがおかしい「性愛教授」などのドタバタがお気に入り。ホラー風味の「越してきた夫婦」や「叫ぶ男」も楽しめる。