異色作家短篇集

ひとり異色作家短篇集祭り

先日の『無限がいっぱい』で、異色作家短篇集を読み終えた。そこで、<ひとり異色作家短編集祭り>と題して、短編集ベスト5と短編ベスト10を発表。明日には雲行きで変わるような気分次第の無責任ベスト。まあ固いこといわずに早速参りましょう。 まずは短編…

『無限がいっぱい』 ロバート・シェクリイ

基本的には以前の印象はぬぐえないが、シェクリイのいろいろな面を発見することが出来た。(○が楽しめたもの)「グレイのフラノを身につけて」 未来の結婚相談システムの話。ふつう。「ひる」 食物を求めて、宇宙からやって来た謎の生物“ひる”。名作だとは思…

『壁抜け男』 マルセル・エイメ

マルセル・エイメはフランスの作家。モンマルトルが舞台の作品が多いらしく、本短編集でも7編中5編にモンマルトルが登場する(残り2編にも登場しているのかもしれない。ちなみにパリが登場しない作品はこの中にはない)。この人もまた異色作家短篇集という名…

『レベル3』 ジャック・フィニイ

異色作家短篇集も読まなきゃ。 ジャック・フィニイといえば時間もののSFファンタジイで知られ、本編にも多くそういった作品が収められている。作品に登場する過去はあくまでも柔らかく、懐かしさに満ちている。ただ、そのノスタルジアは「ここではない、い…

『エソルド座の怪人』異色作家短篇集世界篇

異色作家短篇集は‘奇妙な味’ともよばれるように料理にたとえられることがある。様々な国の個性豊かな香味風味の調味料による料理のイメージ。そうしたことから、異色作家短篇集の掉尾を飾るアンソロジー三集のさらにトリが世界篇であるのは偶然ではないだろ…

『棄ててきた女』 異色作家短篇集イギリス篇

アメリカ篇に比べると地味だなと思ったが、読んでいくうちに渋い味わいがこれまたなかなかに良く感じられるようになってきた。若島シェフの術中にはまったのかもしれない。あるいはオヤジ趣味がいよいよ強くなってきたのか(自分)。以下◎がおすすめ。「時間の…

『狼の一族』 アンソロジー/アメリカ篇(異色作家短篇集18)

異色作家短篇集まだまだ読み残しはあるけれど、若島印ということで、新アンソロジー第一弾に手を伸ばしてしまった。狼男アンソロジーかと一瞬思ったら違った。国別という区切りだった、そういえば。 元来移り気なので、一人の作家を徹底的に追いかけた記憶が…

『血は冷たく流れる』 ロバート・ブロック

解説の井上雅彦氏のご指摘どおり、言葉のうまい遊びがオチに見事に結びつくような話が多く、誤解を恐れずにいえば良質の落語を思わせるものもある。また「サイコ」の原作者らしく、映画や芸能がらみのネタも目立つ。以下◎がオススメ。「芝居をつづけろ」 the sho…

『虹をつかむ男』 ジェイムズ・サーバー

都会的な軽いタッチが特徴。 ジャンル分けは確かにしにくい作風で、作品は多様。日常に妄想が入り込むタイトル作や「愛犬物語」「決闘」なんかは割合ふつうの形式のよく出来た小説。「空の歩道」「大衝突」「142列車の女」「妻を処分する男」「ビドウェル氏の…

『嘲笑う男』 レイ・ラッセル

ちょっと印象が弱いかな。 集中四分の一を占める「サルドニクス」(『マッド・サイエンティスト』にも収録)を除くと、ショート・ショートばかり。男性誌の編集長ということで、軽いタッチがいかにもらしい。非常に良く出来ているが、やや薄味というか。火星の小…

『特別料理』 スタンリイ・エリン

‘特別料理’という超有名な短編がある、と聞けばまずアレかなと考えるよね。で、やっぱりアレなわけだけどこれが傑作なんだよなあ。あらすじだけで小説を読んだ気になっちゃいけないんだという基本的なことを思い出したり。するとこの人の特長は、アイディア…

『破局』 ダフネ・デュ・モーリア

42年ぶりの復刊とは意外なほどすんなり読める傑作ばかり。「アリバイ」 サイコ・キラーもの。主人公の心理描写と(物語中の)出来事の間の絶妙なずれがポイント。コワい。「青いレンズ」 アイディアとしては昔の中間誌の日本SFみたい。ただドタバタにはならず奇…

『夜の旅その他の旅』 チャールズ・ボーモント

異色作家、という言葉のイメージにぴったりの作家だろう。多ジャンルが混在した作品、TVシリーズ《トワイライト・ゾーン》の中心脚本家、アンソロジストでもあり、精力的な活躍の最中に若年性アルツハイマーでわずか38歳で逝去という劇的な生涯。 本書その…

『炎のなかの絵』 ジョン・コリア

いわゆるショートショート集といった感じ。ユーモア色がわりと強いかな。スタイリッシュといっても良いぐらいに長さも皮肉な味わいもオチの決まり具合も揃っている。〈先生、変な夢を見るんです〉の「夢判断」、夫婦のすれ違いぶりがあまりにも見事な「記念日の…

『蠅』 ジョルジュ・ランジュラン

やはりモーリス・ルヴェルと比較をしてしまう。皮肉なユーモアの感じか。エスプリだろうか。いやそもそもエスプリっていったい何。モレシャン、トルシェ、セイン・カミュ・・・ 閑話休題。基本的にはアイディア・ストーリーだし、ミステリ的な謎解きもあるん…

『一角獣・多角獣』 シオドア・スタージョン

一時は名のみ高くて手に入らない、という典型みたいな本であった。実際本気で読むつもりだったかわからない原書まで持っている。とにかく手に入りやすくなってヨカッター。というわけでようやく読了。スタージョンは魔術的な作家で、ちょっと他の作家にはな…

『キス・キス』 ロアルド・ダール

エゴイスティックな登場人物たちによって繰り広げられる残酷な物語を、巧みな描写と構成で描く。そういう意味で「天国への登り道」「牧師のたのしみ」は鮮やかで、後者の作中での視点の転換などは見事だ。ただ少し違ったもので印象に残るものもある。例えば…

『13のショック』 リチャード・マシスン

英題は‘SHOCK!’で、マシスンといえばやはり恐怖。しかし怪奇や怪異ではなく、SHOCK!であるところがミソなんじゃないかな。という訳でマシスンにキングが影響を受けたのもなるほどの洗練された恐怖小説集。アイディアそのものは古い感じのものもあるが、切り…

異色な話、その他の物語

早川書房の異色作家短篇集(編?)に代表される、異色作家・短編集や異色・作家短編集といってよい作品集や関連する短編傑作選がここ数年多く刊行されている。それらをなるべく多く読もうとする平凡なSFファンの読書感想日記である。第一回はその早川書房の…