『血は冷たく流れる』 ロバート・ブロック

解説の井上雅彦氏のご指摘どおり、言葉のうまい遊びがオチに見事に結びつくような話が多く、誤解を恐れずにいえば良質の落語を思わせるものもある。また「サイコ」の原作者らしく、映画や芸能がらみのネタも目立つ。以下◎がオススメ。

「芝居をつづけろ」 the show must go on!まあそういう話。
「治療」 現金強奪をした連中の顛末。身も蓋もないオチが素敵です。
「こわれた夜明け」 ちょっとありがちな世界破滅もの。
「ショウ・ビジネス」 これも業界モノといえるか。ありがちかな。
「名画」 ある冴えない老画家の名画とは・・。コンパクトでいい。
「わたしの好みはブロンド」 ブロンドフェチの男は・・。またも身も蓋もない。
「あの豪勢な墓を掘れ」 ジャズもので隠語が面白い。
「野牛のさすらう国にて」 野牛を追う男達の話。軽く詩情が漂う少しカラーの異なる話。
「ベッツーは生きている」◎ 不遇のシナリオ・ライター。近所に若い売れっ子ライターが引っ越してきて、うまい話を持ちかけてくるが・・・。根が素直なんでオチにはアッと驚きましたよ。
「本音」 本音を世界が話し始めたらというそのまんまな話。
「最後の演技」◎ ハリウッドへ引っ越す途中に妙な男と女に出会った作家の話。ちょっとホンマですかのラストに唖然。いやいやイチオシとしときましょう!
「うららかな昼下がりの出来事」 精神科医もの。うーん微妙。懲りすぎかなあ。
「ほくそ笑む場所」◎ 映像化するとイイ感じと思ったら、ヒッチコック劇場にあるとか。是非観てみたい。
「針」 デスノートもの(?)。オチはふつう。
「フェル先生、あなたは嫌いです」 これまた精神科医もの。国内外を問わず短篇に本当に多いネタ。フォーマットとして書き易いのかな。作品はふつう。
「強い刺激」 女と遊び人とインテリ男の三角関係の果てに。オチは唐突かな。