『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』 ブライアン・W・オールディス

 ええ、そりゃこの紹介文を読んだときから待ってましたとも!
オールディスのポップ音楽もので、‘Tommy'あたりが元ネタといわれれば当ブログとしては見逃せるはずはなし。
 英国の片田舎に生まれた結合双生児がポップスターに成り上がって、愛憎から破滅していく話を、疑似ノンフィクションとして関係者のコメントという形式で描く。基本的にはそれ以上の話ではなく、軽めの作品。でも、コメント形式が全体にマッチしていて、特に彼等が挫折してからのホラー幻想風味あふれる後半が素晴らしく、SFとロックの双方に興味のある人は必読。前身となるバンドの危機からグループの再編、売らんかなの会社、グループに影響を与える女などなど具体的な人物を思い浮かべるロックファンも多いだろう。月並みだけどオールディスってめちゃくちゃデキる作家だなあ。イアン・ポロックの不思議なイラストも印象的。出版の経緯からしても幻になりかけた一作で、またまた柳下毅一郎氏のイイ仕事振りに頭が下がる。それにしてもPierrot Publishingのイラストレイテッド・ブックスで刊行予定だったという<ムアコックのジェリー・コーネリアスもの、ホークウィンドのレコードつき>って非常に気になるなあ(ホントはホークウィンドって聴いたことないんだけどね、失礼ながら)。
あとはアレかな、オールディスももう80歳越えたってのもちょっとした感慨かも。

※追記 SFマガジン5月号 マイケル・ビショップ「合作」が全く同じネタでちょっとどう考えてよいか分からん。書かれた順番ではオールディスが先ということなのだが。訳されたタイミングが近い一方で連動した気配もないし。やはり謎。