『子供たちの午後』 R・A・ラファティ

以前出版されたのが1982年だから四半世紀()も前になるのか・・・。

タイトルから何となく可愛らしい子供向けの話が中心なのかと思っていたが、奇想天外なユーモアにあふれながらも残虐ないつものラファティで安心()した。ラファティの面白さを説明するのは中々難しい。正直なところ随分昔読み始めた頃、『九百人のお祖母さん(ラファティ入門に最適)のタイトル作やカミロイ人ものなどは素直に楽しめたものの、ある種の短篇では予想をはるかに越えてしまう話の展開やラストの分かりづらさや意外な残酷趣味などに戸惑い、思っていたより手強いなあと感じたものだ。近年長編『地球礁』『宇宙舟歌』が訳され、こちらも遅ればせながら勘所がつかめてきた。個人的には、ラファティの異質なものの描写がすごいと思う。よく変な宇宙人などが登場するのだが、凡百のSFには及びもつかないほど個性的でこちらの常識を覆すようなセリフがポンポンでてくる。そして異質なものを通じて活写される人間の姿がいかに奇妙なものなのか知らされることになるのだ。さらにその視点があまりに異質であるために、時には恐ろしさも感じられ、ホラーにも肉薄する。そんなところが他に類を見ない面白さになっていると思う。

以下各編につき。◎がオススメ。

「アダムには三人の兄弟がいた」 アダムではなくその兄弟の子孫であるレックという人たちの話。割合あっさりしているかな。

「氷河来たる」 冷戦時代の破滅ものともいえる。科学者のやりとりが笑える。

「究極の被造物」◎ グロル星の美女の話。相当ヒドいオチである(<ほめ言葉)

「パニの星」◎ このパニのほどよく恐ろしいキャラクターが強烈。イチ押し!

「子供たちの午後」◎ 子供の宇宙人(といっていいのか?)が地球をもて遊ぶ話。子供もラファティに登場する。無垢なるものの横暴さというのもらしいテーマ。

「トライ・トゥ・リメンバー」 気の利いたショートショート。よく出来ているが、むしろらしくなく感じられる、というのはうがった見方か。

「プディプンディアの礼儀正しい人々」◎ 東洋人辺りをイメージしたのだろうか。やたらと礼儀を重んじるプティプンディア星人もとんでもない人々だ。

「マクグルダーの奇蹟」 これも冷戦が背景になっている。普通っぽいがオチは笑える。

「この世で一番忌わしい世界」◎ 不適応とされた宇宙航海者はある星に流されてる話。ちょっとした仕掛けがおかしくよく出来た話。全体としては普通めのSF

「奪われし者にこの地を返さん」 これまたヒドい。いやこんな身も蓋もない話はこの人しか書けないかも。

「彼岸の影」 精神科と変な夢をみる患者の話。夢の描写は魅力的だが、ネタ・オチともに普通め。

全体に普通のSFっぽいフォーマットやネタの作品が多めで読み易い気がする。もちろん毒たっぷりめのものもちゃんとある。

尚、巻末の未訳長編の紹介は大変参考になった。一部誤植が目立つが・・・。