『特別料理』 スタンリイ・エリン

 ‘特別料理’という超有名な短編がある、と聞けばまずアレかなと考えるよね。で、やっぱりアレなわけだけどこれが傑作なんだよなあ。あらすじだけで小説を読んだ気になっちゃいけないんだという基本的なことを思い出したり。するとこの人の特長は、アイディアより巧みな引き締まった文章にあるのかもしれない(原文には当たっていないけれど)。いずれにしてもオチの決まった切れ味の良いミステリ集である。表題作以外は、女性の死をめぐって責任を押し付けあう、夫とその姉にある秘密は・・・「クリスマス・イブの凶事」、プライドの高い男と奇術師の対決を描く「決断の時」が楽しめた。