『ラギッド・ガール』 飛浩隆

 待望の《廃園の天使》シリーズですよ!
 予定では『空の園丁(仮)』が先だったような気もするが、本短編集が登場した。今回は〈数値海岸〉の成り立ちや〈大途絶〉の経緯が明らかになる。
 実に周到な設定のシリーズである。仮想空間の話だから、基本的に何でもありで、幻想的なシーンも無理がない。様々な土地を舞台にした、色々なジャンルの話を書けることにもなる。だがその背景には実は緻密なアイディアがあり、SF作家らしい仕上がりになっている。それにしても〈官能素〉って、ウマいねえ。でも敢えていえば、アイディアうんぬんより凄惨でありながら美しいファンタスティックなイメージそのものが作品の核かな。仮想空間のリゾート、ヴァーチャル・アイドル、ハッカーとか道具立てをみると、なんだかよくある話みたいに聞こえてしまうし、ある程度意識的に過去のSFを思い浮かばせるようにしているような箇所もあるが、あくまでも先達の作品群を越えた新世紀のフィクションになっているので、食わず嫌いの人も是非。ところで、ボリスってBoris the spiderのことですか?