映画‘スキャナー・ダークリー’

 公開される劇場が少ないので、逃すと一生観られなくなるかもしれないと思い、とにかく‘スキャナー・ダークリー’を観た。まず実写にデジタル・ペインティングを施す〈ロトスコープ〉という手法による映像が独特。監督のリチャード・リンクレイターは作品『ウェイキング・ライフ』でも同様の手法を使っていたらしい(HPによる)。なんとなく実写とアニメが混ざったような映画なのかなと事前に思っていたが、そうではなく全編この手法による映像である。現実感の揺らぎをテーマにしていることではこうした奇妙な映像は効果的だし、スクランブルスーツの表現は見事。ただ《アニメ的飛躍表現(いわば一種のサーヴィス)の少ないアニメ》といった感じが淡々と続くので、新しい映像表現を普段見慣れていない自分には少々単調でキツかった。もちろん原作のやるせなさはよく出ているし、麻薬犠牲者への献辞もちゃんと使われるなど、全体として原作への敬意が十分に感じられ、ディックファンは見逃せない作品だろう。それにしてもこの監督、『スクール・オブ・ロック 』の人だったとは。良質のコメディだった同作とは今回は随分テイストが違う。いずれにしても、トム・ヨークの曲も中々良いし、ロックには強い監督のようだ。

余談。この作品公開初日に観たのだが、1982年に同じディック原作の『ブレードランナー』を公開初日に観たことを思い出した。あれから四半世紀経ってしまったのか・・・嘆息。