『大失敗』 スタニスワフ・レム

 youtubeあそびはちょっとやすんでと。
 凄まじいまでの濃密さ。各所で話題の歩行型ロボットのアイディアも驚愕だが、〈バーナムの森〉の描写が恐ろしくも美しく圧倒的である。その他宇宙探査、ファーストコンタクト、宇宙戦争などなどソフト/ハードの両面についてのアイディア(しかも濃厚!)が次から次へと繰り広げられる。レベルが高すぎて、実際のところレムのよい読者でもクレヴァーな読み手でもない自分のちっぽけな脳みそからは相当はみだしてしまったよ。解説で指摘されているように、本作には架空批評ものと初期の物語性の強いSFものの要素が共に入っていて、物語が続くかと思うと、哲学的はたまた宗教的なディスカッションがガンガン入ってくるので、決して読みやすいとはいえない。それでもやっぱりこれは歴史的な一冊でしょう。人間の失敗とは何か?人間の希求するものは何か?というような大きなテーマを宇宙的なスケールで描くという試みに、ほとんど独力で道を切り開いたレム(昔のポーランドで検閲を受けながらの作家生活は想像を絶する)。いまさらだがもっと読まなきゃなあ。