『透明受胎』 佐野洋
先週末に地元で夏祭りがあり、その片隅で古本市をやっていた。
もちろん小規模なものだが、覗いてみて驚いた。
SFの神が降りたのである。
とはさすがにおおげさにしても、ハヤカワSFシリーズなどや古いSFが30冊ほど。なかには『隠生代』『奇妙な触合い』『原子力潜水艦シービュー号』、さらには『22世紀のコロンブス』なんかも混じってたり。
値段は一冊10円。10円である。なんと10円であるのだ。<わかったちゅうの
いわゆる美本でないが、表紙は全部付いており、帯の付いてるものまである。
もちろん大部分を買ったのであった。今回読んだのはその一冊。1965年の作である。
車にはねられた主人公津島は、気が付くと20歳以上も年をとったかのように老けてしまっていた(しばらくして元に戻る)。一方、車を運転していた田部佳代は実年齢とかけ離れた若さを持つ女だった。津島はやがてこの不思議な女と深い関係になるが・・・。‘処女生殖’をテーマにしたSFミステリ。さすがミステリ界の大御所だけあって過剰なほどの男性読者サーヴィスを巧く盛り込んで、どんどん読ませる。謎解きには少し首をかしげる部分もあるが、キチンと決着はつけてるし、中盤にはなかなか大ネタのSFアイディアが顔を覗かせたりして興味深い(その大ネタ方面にいかないところもミステリ作家らしさかも)。昔の中間小説誌(いまどきいわんかな・・・)を思わせる感じで、展開やオチもオヤジ向けらしさが前面に立つが、なんか懐かしくもある。
なんていってたらこんな話も。先生!ネタ選びは予見的でしたよ!
収穫を記念して一枚。一番手前が本書。