『QED〜ventus〜〈鎌倉の闇〉』 高田崇史

 新しく迎えた副社長の力で急伸する会社。株式上場を前に、社長室で殺人事件が発生し、密室とのはずのその部屋から社長が失踪する。
 鎌倉を舞台にしたミステリは驚くほど数があるらしい(それにしても充実したサイトである。事件の舞台を細かく場所別に分類したコーナーは圧巻!
)。本作はかなりの観光スポットを網羅しており、まさに正統派()<鎌倉観光ミステリ>になっている。現代の殺人事件と鎌倉幕府成立に関わる謎が並行して明らかになる展開。いずれの真相も、鬼面人を驚かす様なものとはいえないものの、一般に静かで落ち着いたイメージで捉えられがちな鎌倉という土地の裏の顔に焦点を当て、薀蓄と共にテンポ良く各所が紹介される手際は見事なもので、楽しい読み物に仕上がっている。