『セル』 スティーヴン・キング

 数週前にJRに乗っていたら中吊り広告に、「新連載小野不由美原作『屍鬼』」だとか、「乙一×荒木飛呂彦」だとかなかなか興味をそそる見出しの雑誌が並んでいて、買ってみたジャンプ SQ. (スクエア) 。個人的には少年漫画誌(何だろうと思うが)、を買ったのは20ン年ぶりだと思う。けっして漫画を読まなかったわけではなく借りて読んだ記憶はあるのだが、ただジャンプに入れあげた記憶はほとんどない。で、このジャンプSQだが、小野不由美×藤崎竜屍鬼』や荒木飛呂彦は面白く、ちょっと期待のもてそうな雑誌である。乙一版のジョジョも読みたくなってきた(対談で乙一の顔写真がのっていた。はじめて見たな)。あとその他のいくつかの漫画では、最近の漫画というのはこうゆう感じなのだなあというオジサンらしい発見もあった(少々悲)。
 で、何だか今までほとんど知らなかったゾンビもの(その系統では映画‘ナイト・オブ・ザ・リビングデッド’のDVDぐらいしか観たことが無い)を読んでみたくなった。で、ちょうどそれに近い路線のキングの新作が出ていた。
 ある日突然、世界は災厄にみまわれる。人々が正気を失い殺し合いをはじめたのだ。どうやら携帯電話を使っていた全ての人々がその瞬間からゾンビと化してしまったのだ!携帯電話を使わずにその影響を免れた主人公クレイはなんとか命からが抜け出すと、数少ない同じような仲間と共に愛する息子を探す旅に出る。
 地獄のロードノベルといった感じだろうか。冒頭からクライマックスのような激しい描写で、その後も息もつかせぬ怒涛の展開(ああこんなことになるなんて!)でいっきに読ませる。終盤にはちょっとロックファンらしいところも感じられた。他作とのつながりもあるようで、ファンにはそうしたところでも楽しめるようだ。とにかく理屈抜きのリーダビリティに脱帽である。