ポリス来日!

 1980年代前半で最も先鋭的かつポピュラリティを獲得できたのはポリスに他ならない。時代のうねりと音楽の変革が共振していた60〜70年代という稀有な時代を共有できなかった80年代ロック世代にとってはそうした渇望感を埋めてくれる唯一の希望の星がポリスだったのだ。しかし1983年に最高傑作である‘シンクロニシティ’発表後あっけなく解散してしまう。さらにさらに日本のファンには残念なことに、その前には来日していながらも、ビデオでは‘シンクロニシティ’時のめちゃくちゃかっこいいライブ映像をみせられながらも、そのライブは日本では行われなかった。馬の鼻面の人参である。えんえんと悔しがっていたファンは多い。
 そのポリスが来日するのである(大丈夫なのか?アンディ・サマーズ65歳!)。そしてその日本公演に行くことになったのである。長年のファンなのに行けないという人には失礼だが、実はあきらめたこともあった。ところがチケットがまた迷い込んできたために、やっぱり行こうと決心した(仕事で行けなくなってしまったT氏すまん)。

 さてそのポリス。ちょっと歌詞カードを横目でみながら聴いてみることにした。その歌詞を書いているのはほとんどスティングで、有名な‘高校教師’にナボコフの名が登場することや‘見つめていたい’がストーカーネタであることや韻の踏み方が巧みであることなどは知っていたが、あらためてみるとその歌詞に英国人らしい文学趣味、怪奇風味が漂っていて興味深い。例えば‘シンクロニシティ?’。

 Many miles away something crawls from the slime 
 At the bottom of a dark Scottish lake


なんてなかなか雰囲気がある(スティングのソロには狼男ネタもある)。また同じ‘シンクロニシティ?’にレミングネタが入っていたとは初めて気づいた。妙に計算された歌詞世界とひけらかしが鼻につくという人もいるだろうが、ツカみが上手く深読みさせるという仕掛けはやっぱりさすがである。ポリスの中には‘ゴースト・イン・ザ・マシーン’といういかにもなタイトルのアルバムもあるし、ポール・ボウルズの話もスティングのインタビューには登場するらしい。機会をみてもうちょっと丁寧に歌詞を追ってみようかな。