『残酷な童話』 チャールズ・ボウモント

 Charles Beaumontの第一短編集(ボウモントかボーモントかよく分からないので英語表記)。『夜の旅その他の旅』は第三短編集にあたるらしい。作風にはそれほど違いは感じられず。初期から完成された作家であったことがよく分かる。やっぱりBeaumontはいいなあ。(以下印象に残ったもの)

「残酷な童話」 異常な母親に娘として育てられ異常な教育をほどこされる少年。珍しいネタではないがイヤな感じは古びていない。
「名誉の問題」 悪い仲間にそそのかされたフリオ。切れ味の鋭さと情感。らしい一品。
「フェアレディ」 こちらは孤独な女性の話。洒落と皮肉の効いた作品。
「ただの土地」 金を踏み倒すのが趣味の小悪党が、突然とりつかれたこととは。これも既視感のある話だが巧いんだよねえ。
「自宅参観日」 ノックの音がした。ミスターピアスは凍りつく。いやヒドイ話だな。最高。
「夢列車」 列車に乗った少年の夢とも現実ともつかない不思議な世界。こういうのを書く手つきも鮮やか。好きだなあこれ。
「ダーク・ミュージック」 生物学教師でありながら、性教育を嫌悪するミス・メイプル。森から聞こえる音楽に導かれて・・・。サイコネタも多いんだけど、距離感の保ち方が絶妙なのがいいんだな。冷たすぎずしつこすぎず。一方でカルト的な支持が得られにくい感じもあるんだけどね。
「変態者」 同性愛ネタの扱い方をスタージョンの某作と比較すると中々興味深い。
「飢え」 連続殺人者の徘徊する町で、ジュリアの取った行動は。これなんか映像化が似合うような作品。脚本家らしい。
「地獄のブイヤベース」 グルメ・クラブの究極メニュー“ペスキン風ブイヤベース”。クラブのルールに従わず、レシピを教えようとしないペスキンに対し、ミスター・フレッチャーボーイは。ちょっと「特別料理」を思わせる話だが、一味違う処理をしていてニヤリ。
「ブラック・カントリー」 「夜の旅」と並ぶジャズ小説。これも傑作。ジャズについて語るとき文に熱を帯びるところが微笑ましい。
「犬の毛」 いわゆる悪魔との契約もののヴァリエーション。小品だが笑える。