生誕80年 澁澤龍彦回顧展 ここちよいサロン

 用事があって横浜に出かけたところ、<生誕80年 澁澤龍彦回顧展 ここちよいサロン>をやっていることに気づき、港の見える丘公園神奈川近代文学館に足をのばした(最初美術館と誤記した)。
 もちろんSFやファンタジイを読んできているわけだから澁澤龍彦の偉大さは認識しているつもりで、著作や訳書をいくつか読んではいる。ただ中学の頃はSFファンでも本格SFやハードSFが好きだったので、幻想系耽美系の澁澤龍彦はなんだか(少し怖い感じの)遠い存在であった。さすがに最近は嗜好性の変化もあり非常に惹かれる存在になったものの、今度はあまりの存在の大きさゆえにどこから手をつけてよいやら悩ましいのは正直なところだった。
 そんな中、昨年鎌倉文学館で<澁澤龍彦 カマクラノ日々>という企画展があり、文学と芸術に生き表現の自由のため裁判でも闘った人というともすると強面にみえる表の顔とは全く違う一面を知ることが出来た。それは育ちのよい気さくな好青年の顔といったらよいだろうか。裕福な名門の一族に生まれ、好奇心の赴くまま多士済々な人々の交流の中で次第にあの‘澁澤龍彦’になっていく。そんな交流の舞台のひとつが鎌倉なのだからますます興味をひかれる。
 今回の回顧展もそうした交流の多彩さがテーマで、そういう意味では似た性質のものである。それでもさすがに出て来る人物がジャンルは幅広いし、半端ではない個性の持ち主たちだし、各種の事件も華々しいしで、やっぱり面白い。『高丘親王航海記』を早く読まないとなあ。この回顧展、6/8までやっているので興味のある方は是非。