新装版<新しい太陽の書> ジーン・ウルフ

 さて新装版の<新しい太陽の書>1巻『拷問者の影』。
 今回の新装版は装丁もさることながら5巻目の『新しい太陽のウールス』も出るのがポイント(ご存じの方も多いと思うが、編集者の要望で書かれたこの5巻目はシリーズの様々な謎を分かりやすく説明する役割を果たしているらしく翻訳が待たれていた)。
 で、それが出る前にと思いまずは1巻を再読。再読のはずなのに全くストーリーに記憶がない自分自身の脳力に愕然となったが、閑話休題読み出したら面白くて止まらず。サーヴィス満点で読みやすい上に重層的なのだから本国でもこれを機に評価が高まったのも納得だ。
 以前はすらすら読めなかったのが、今回読みやすく感じられたのは再読だからというより、『ケルベロス第五の首』や『デス博士の島その他の物語』で慣れてきたせいだろうと思う(本書自体は初読みたいに話に既視感が乏しかったので。これは本の評価とは関係ないですが)。とにかくいわゆる名作といわれる作品群と同様に、本作にも様々な面がある。SF、ファンタジー、ミステリ、ホラーだけでなく、アクション(ちょっとしたレースの場面すらある)やコメディといった要素も取り込まれているのだからお見事。以前読んだときも面白かったと感じてはいたものの凡百のSF・ファンタジーらしからぬ残虐かつ官能的なイメージといった表層部分にのみ反応していただけだったようだな。
 柳下毅一郎さんブログによるとSFマガジン10月号<新しい太陽の書>読本とな!まずは4巻まで頑張らなきゃー。