『年刊SF傑作選 4』 ジュディス・メリル編

 少しずつ読み続けている年刊SF傑作選(実は6までしか持ってないのだが)。今回はベスター、ライバー、ボーモント、カーシュ、コードウェイナー・スミスとくるので読む前からわくわく。(以下○が特に楽しめたもの)

「新ファウスト・バニー」 ウィリアム・テン リカードオの事務所にやってきたうすぎたない小男は変わった取引話を切り出す。こういう経済的な取引をメインとした話はアメリカのSFに多い気がする。そしていつもそのシビアさについてのユーモアを理解し切れてない感じがしてならないんだよな。
ジープを走らせる娘」○アルフレッド・ベスター 世界は終わり、唯二人残されたリンダとジム。奇想コレクション『願い星、叶い星』に収録された「昔を今になすよしもがな」である。以前読んだときは特に派手なことが起こらない地味な話、という程度の印象だったが、今回は傑作だと分かった。以前‘ゴーレムトークショー’でも言及されていた、素晴らしく男女の会話が巧みなベスターがここにある。
「二百三十七個の肖像」○フリッツ・ライバー 偉大なる名優だった父親の夥しい数の肖像が残された家。ひきこもったアルコール依存の息子に肖像が語りかける。これもアルコール依存症ものなんだな。もちろんアイディアそのものは平凡なのだが、それぞれの肖像が語りだす光景がありありと浮かんでくる楽しい作品である。
とむらいの唄」○チャールズ・ボーモント その村ではソロモンがやってきて<とむらいの唄>を唄うとその人は死んでしまうという言い伝えがあった。主人公はそれを迷信としてはねのけようとするが。○は甘いかな?ボーモントはねえ、好きなんですよ。
ユダヤ鳥」○バーナード・マラムッド ある日窓から飛び込んできた痩せた<ユダヤ鳥>。とにかくめちゃくちゃ変な話であり、面白い。オチに唖然。
「二つの規範」 フレドリック・ブラウン よく出来たショートショート
「明朝の壺」 E・C・タブ 骨董品店から高価な明朝の壺が盗まれた。超能力をネタにしたSFミステリ。スペースオペラ<デュマレスト・サーガ>の人だね(読んだことないけど)。テンポよくリーダビリティが高く楽しめる。
「カシェルとの約束」○ ジェラルド・カーシュ 売れない作家である主人公。二日酔いの中、いつもはシブい編集カシェルから金をせしめるのに成功したのを思い出す。いった何があったのか?これもよくある話といえなくもないけどね。カーシュも好きなんです。
酔いどれ船」 コードウェイナー・スミス アルチュール・ランボーを主人公に据えて、その詩をSF仕立てにした作品。というわけで(以前読んだときもそうだったのだが)、やっぱり元ネタを読まないとピンと来ないな。また出直しますわ。
4も面白かった。