『宇宙創世記ロボットの旅』 スタニスワフ・レム

 レムもまだまだ未読が多いのだが、とりあえず薄めのこれを読了。
 万能のロボット二人(二体?)連れトルルとクラパウチュスが宇宙を旅して数々の究極の難題に挑戦していく、というお話。星をつくったり消したりするのも軽々、という力の持ち主たちだけに、哲学とんち風の魔法使い弥次喜多珍道中、みたいな感じ?なるほど楽しい一冊。でもレムだからね、濃いですよやっぱり。以下印象に残ったもの。

「詩人『白楽電』の絶唱」 おお!詩を作る機械の話をレムが書くのだから、これは面白いに決まってる(そうそうバラードとラファティ!)。オチも好きだな〜。
「猟王『残忍帝』の誘拐」 このシリーズ、変わり者の王様から無理難題を仰せつかるというパターンが多いのだが、この話ではハンティング好きの王残忍帝から今までにないような獲物を作って欲しいといわれる。しかし、この難問に答えられず命を奪われた者が数限りないと知ったふたりは・・・。SFらしいエスカレートするドタバタ劇と強引な解決がいい。
「竜の存在確率論」 さてトルルとクラパウチュス、実は高等非実在専門学校で『竜概論』をまる四十年間講義しつづけた偉大なるケレブロン・エムドラタ教授の教え子であった!というわけで、冒頭の竜を巡るめくるめく(バカバカしい)ディスカッションから竜騒動解決に出かけての一件落着まで抱腹絶倒。
「盗賊『馬面』氏の高望み」 今回のとんち相手はインテリ盗賊の『馬面』氏。なんと学問の宝全てが欲しいというのだから大変。情報に関する話に突入する終盤、40年くらい前に書いたレムの慧眼に脱帽。
「トルルの完全犯罪」 国を追われた孤独な放逐王に同情したトルルは、彼の自由になる小さな箱入りの国家を与えてしまう。レム流の「フェッセンデンの宇宙」だろうか。小品ながら壮大なスケールがちらと垣間見える、これまたSFらしい作品。