『地球の静止する日』(角川文庫版)

 創元文庫版と同名異本ということになる。ややこしいことに、映像化されたSF作品のアンソロジーでレアなものを収めたという意味ではどちらも同じ様な企画。で、本書の方は最近リメイクの企画が立ち上がったものを集めたとのこと。さらに解説によると、この本の企画は最初に2001年にあったということだから、こちらの方が早かったのだろうか。そして先にあちらが出た後に、本書は紆余曲折を経て(解説をご参照)本書が今回お目見えということのようだ。(○が楽しめたもの)
地球の静止する日」 再読で正直特に感想はないのだが、動きの少ない割と渋めの話だよねこれ。
デス・レース」 未来社会のショーとしての殺人スポーツ、といったネタは現在まで永らく映画の題材になっているよね。
「廃墟」○ 真っ向直球勝負の読書SF!映像化されたのに、読書の話であるのがちょっと面白い。
「幻の砂丘」 タイムスリップというのも映像化にぴったり。アメリカの砂漠地帯というのも舞台としてふさわしい感じ。
「アンテオン遊星への道」 不幸にして原因不明の内紛に陥った最初の星間移民船への反省から、新たな宇宙船ではジャーナリストを同行させて出発する。まずまず楽しめる。
「異星獣を追え!」○ 地球に侵入して来た危険な異星獣プードリイを仕留めようとする主人公は・・・。牧歌的といわれるシマックの二転三転するアクションSF。こんなのも書いているんだ。
「見えざる敵」 とある惑星を探査するチームに忍び寄る敵とは。話としては十分面白いし、解説にあるように後のSFドラマや映画に影響を与えてる印象はある。ただ、コンピュータを軽視し過ぎる頼りない司令官、という設定はさすがに古いかな(今ならコンピュータに頼り過ぎる司令官とか)。
38世紀から来た兵士」 未来社会のテレパシーでコントロールされた兵士が、タイムスリップして現代へやって来て。かっちりまとまってよく出来た話だが、その分なんだがエリスンらしくない。むしろ‘ターミネーター’をめぐる場外乱闘のほうがらしいというべきか。
「闘牛場」○ 熾烈を極める地球人と“侵略者”の宇宙戦争。とある惑星に不時着した主人公は、高次生命体の導きで、地球の代表として存亡をかけて“侵略者”の代表と一対一の決闘をすることになったのだ!こういうアホらしいほどの大ネタはオリジネーターの強みだな。ブラウンは偉大なり。
 全体的に創元文庫版に比べ正攻法なSFアンソロジーといった趣き。さて映画の方もぜひ観たいのだが時間があるかなあ。