『緑の星のオデッセイ』 フィリップ・ホセ・ファーマー

 フィリップ・ホセ・ファーマーの長編を初めて読んだ。
 遠い未来の銀河系で、地球人(と地球外人とその混血)は生存可能な星に散らばって住んでいるが、宇宙旅行可能だった技術は忘却の彼方でどこの文明も退化した状態。そんな中宇宙船の事故にあった、主人公で地球人のグリーンは大きな草原が海のように広がる中世的な文明を持つ星に不時着する。また、地球人はあらゆる感染症に対処できる共生体を手術的に埋められており・・・。
 結局、以上の様な設定は、古い時代の地球文明で成り立っているエキゾチックな異星を行く冒険娯楽小説を成立させるためのもの。グリーンは奴隷にされてしまうのだが、現地の綺麗で情熱的な妻がいて、彼女には利発で従順な連れ子がいたり、地球に帰りたがっているのにそれも最終的には許されたり、全体に行き当たりばったりのわりにちゃっかり本人の望み通りに物事が運んだり、何だかまあ随分虫の良いお話ではある。でも、草原を行く帆船車のイメージは中々良いし、星の歴史についての謎解きもちゃんとあるなど意外に侮れないのだ。
 気は良いんだけどちょっと胡散臭いオヤジのホラ話を半分くらいの興味で聞いていたら、思いの外よく出来ていてついつい引き込まれてしまった感じ。グリーンが草原を旅する話だからThe Green Odysseyというタイトル、というあたりもオヤジギャグっぽい(まあ読んでいるこちらもオヤジなんだけど)。

※追記 今の世の中だと旧聞になってしまうのかな、2009 2/25逝去。高齢だからな。最近興味を持ちだした作家なので、
再刊とか出るといいけど。無理かな。