『木曜日だった男 一つの悪夢』 チェスタトン

 変な作品だなー。でもなかなか印象的でユニーク、ミステリのいろんなオールタイムベストに挙げられているのもわかる。
 主人公の詩人ガブリエル・サイムは同じく詩人で無政府主義者のグレゴリーとディスカッションをしていたが、やがてグレゴリーに連れられ、秘密を守るように厳命された上で、無政府主義者の集まりに招かれる。そこは日曜日というあだ名がついた議長を中心にそれぞれ曜日のあだ名がついたメンバーがいて爆破計画について話し合っていた。また、木曜日の名がついたメンバーが死亡して、その後継はグレゴリーが予定だったのだが、サイムは自らの素性をグレゴリーに告白して・・・。
 おどろおどろしい情景描写が目立ち、抽象的な論議が飛び交い、結構重々しい空気感が漂う一方で、ストーリー展開はどんでん返しに次ぐどんでん返しのにぎやかなドタバタアクションという作品で、このアンバランスさが変に後を引く。解説を読むと割とシリアスに書かれたようで、また何とも不思議な気持ちになる。そういう意味ではこの作品自体がミステリ性を持っているというメタっぽい構造を持つ作品といえるのかもしれない。