『メアリ・シェリーとフランケンシュタイン』 モネット・ヴァカン

 樺山三英「One Pieces」(『超弦領域』)についていた作者のコメントで言及されていた本。そういえば持ってたなあということで、メアリ・シェリーをめぐる複雑な人間関係を知るために読み始めたが、なんやかんやで随分時間がかかってしまった。
 メアリ・シェリーの夫、パーシー・ビッシュ・シェリーという人がとんでもない人で、情熱的かつ勉強熱心といえば聞こえはいいが、後先顧みない気まぐれな人物である。最初はメアリの姉ハリエットの夫だった男であり、メアリに入れあげては子供までつくって、ハリエットは結局自殺してしまう。経済的困窮はひどいわ、さらにメアリとの間の小さい子供を連れまわして死なせてしまうし、案の定浮気をするわ、挙句の果てに三十歳になる前に水難事故で死んでしまうわ大変な御仁である。そこに近親姦に同性愛のスキャンダラスな詩人バイロンが、メアリの妹クレアの愛人としてからんでくるのだからこれまた。濃密で危険な人間関係と進取な精神と教養にあふれた稀有な環境の中(メアリの両親も進歩的な人物であった)、ブライアン・オールディスがSFのはじまりとして位置付けたかの「フランケンシュタイン」が生まれたのだということが分かる。
 後半は生殖医療をめぐる古風な科学技術批判。まあその主張はともかく、メアリ・シェリーの読者はこんなの期待していないんじゃないかなあ。
 というわけで、前半を読めば十分ではないかと。(やや!いつのまにかレア本になってるらしく、なんだかすごい値段ですな)