『ダブリナーズ』 ジョイス

 何かいろんなことをいわれて偉い作家であるジョイスだから身構えて読んだら訳者のおかげもあるのか読み易いフツーにいい小説だった。内容は連作短篇集といってもいい形式(好物である)。登場人物が多く出てくるので要約しにくいが、ダブリンを舞台にした人間模様といった感じか。教会、バザー、街道、酒場、下宿屋などなどいろいろな場所で、様々な人々の物語が語られる。その街や人が実に生き生きと描かれているのだ。そしてラストはこの時期にふさわしいパーティでの出来事「死せるものたち」による素晴らしいエンディング(公現祭というらしく、どうやら年始のようだが)。感動いたしました。
 多重な意味がこめられ、細部まで緻密に書かれて言葉遊びもある作品らしいので、より深く楽しむことが出来るようだが、さらっと読んだだけでも十分に面白かった。