近田春夫について

 近田春夫がんで闘病中らしい
 よく調べると結構前からのようだが、全く知らなかった。闘病のことも笑ってネタにするあたり、やっぱりデカい人物だと思う。
 自分がハマったといえる日本のバンドが三つある。PINKとビブラストーンクレイジーケンバンド近田春夫のバックバンドが母体になったPINK、近田春夫自身の人力ヒップホップバンドビブラストーン、早くから近田が絶賛していたクレイジーケンバンド。つまり自分は近田の周りをぐるぐる回っているだけなのだ。
 なかでも忘れられないのはビブラストーンとの出会い。1990年江戸アケミが急死(結局じゃがたらのライヴをみることが出来なかったな)、日比谷の野音で追悼コンサートが行われた。確か亡くなって間もない時期に急遽行われたライヴで準備が十分されておらずまた天気もぐずついて全体にどんよりした空気が流れる中、近田春夫がテキパキと「これから2(3?4?)曲やります!じゃがたらの曲と××」(たしか「でも・デモ・DEMO」と「NASU-KYURI」はやったと思う)、歯切れよく仕切る姿が小気味よく、おとなしかった観客がノリだし、すっかりファンになったのを思い出す(またこんなことも言っていたかもしれない→ココのコメントのところ。いつもはっきり発言する姿勢に頭が下がるなあ)。
 長いキャリアを眺めると、歌謡曲とロックの融合、日本製ヒップホップの創造、といった先駆的な仕事をしており、それは近田春夫がポップミュージックの本質的な部分を抑えていた証拠だろう。
 だからもちろん音楽評論家としても他に類を見ない切れ味鋭く新鮮な視点を持っていて、『気分は歌謡曲』や『考えるヒット』のシリーズは面白い上に刺激的で何度も読み返している。
 そしてミュージシャン/評論家として日本のポップ音楽界の巨匠といってもいい存在なのだが、あくまでも軽妙洒脱でそんな重々しさを感じさせず、いつまでも「俺なんか信用しても何にもならないよ」といった佇まいが何ともこの人らしい。もっともっと評価が高まるべき人なのだが、本人はこだわっている感じはあまりない。ただ、より多くの人にこの人の存在の大きさが浸透して欲しい気はする。