「トウキョウソナタ」TV視聴

 熱心に追っているとは決して言えないが、好きな映画監督黒沢清の「トウキョウソナタ」をCSで観た。やはり面白い。
 とある東京の狭い一軒家の四人家族。サラリーマンの父親がリストラされてしまうが、家族にそのことが言えない。次の仕事は見つからず、父親は焦る一方で息子たちに問題が起き始める。
 ちょっとしたきっかけで家族関係が危機を迎える、なんてまとめてしまえるけど、もちろんこのユニークな監督のこと、話はそう単純ではない。後半意表をつく展開になることもそうだが、前半部でもちょっとずつ平凡な日常をずらして描くところが巧みで、ひねりの効いたユーモアが随所に光っている。またこれまでの作品もそうだが、風景が印象的。本作でも、狭い一軒家(駒場東大前だそうだ。通学していたので個人的に懐かしい)、古い団地、小さい公園、大型ショッピングモール(これがポイントかも)などなど現代日本らしい風景がよく表現されている。それから、日本人が米軍に参加するっていう設定がフィクションとしての重しになっていて、家族ドラマに奥行きが出てくるところもいい。そして意外なほど詩情あふれるラスト。あらすじになるとどうにも地味めにうつる話だが、普遍的なテーマを扱っている分、長く評価されうる作品になるかもしれない。映画後のインタビューも興味深いものだった(狭い家の中のスペースそのままに撮影したとか、小泉今日子の笑っていない顔がいいとか)。次回作は劇場で観よう。もっと応援しなければいけない人だな。
 それぞれの俳優も存在感があってよかったが、それにしても小泉今日子が大学生の母親役っていうのも時の流れだなあ。