映画‘ソーシャル・ネットワーク’

 評判がいいので早速観てきた。facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグに関するノンフィクションを元にした映画である。

 コンピュータに精通した天才マーク・ザッカーバーグハーバード大学の学生。人づき合いを重視するタイプではなく、ある日心ない発言でガールフレンドにふられる。むしゃくしゃした彼は寮に帰ると彼女を誹謗するブログを記すと共に、友人エドゥアルドとハッキングによって女学生たちの写真をオンラインでアップして即席の美人コンテストを始め、ハーバードのサイトをダウンさせてしまう。大学の委員会で処分され、女学生たちの信用も失った彼だったが、その実力に目をつけた上級生ウィンクルボス(双子兄弟)たちが、ステイタスであるクラブへの参加をちらつかせ、ハーバード学生を中心とした会員性のコミュニティサイトの立ち上げを持ちかける。アイディアを拝借してマークはエドゥアルドと独自のサイトfacebook(最初はthe facebookだったらしい)を作り、それはやがて他大学さらには海外までどんどん広がっていく。それに気づいたウィンクルボスたちは約束違反として対抗手段を準備する。一方瞬く間に巨大化していくサイトに注目に目をつけたナップスターのショーン・パーカーが2人接近、資金の調達に苦労していたエドゥアルドとマークの間に次第に溝が生まれる。

 この映画に教訓はない。天才の全くの下世話な動機から生まれたサイトが世の中を変えてしまう。動機は不純だが、その後のマークは大きな潮流の中で開発に没頭しただけのこと。エドゥアルドはステイタスであるクラブへの入会にこだわるどちらかというと普通の人物だが、資金調達では学生としての限界を露呈してしまう。ウィンクルボスらは良家の出でコネをちらつかせる嫌味な連中だが、ハーバード精神を遵守しようと悩むお坊ちゃんっぽい弱さも兼ね備えている。ショーン・パーカーはちょっとアヤしい人物に描かれているものの、彼抜きでは成功は小さいものとなった可能性が高そうだ。つまりどの人物とも描写に一定の距離が保たれていてクールに、かといって突き放さずきちんと描かれている。また時系列の入れ替えも大変巧みでフィンチャー円熟したなあと感じた(いわゆるフィンチャーっぽい映像処理は目立たない。またフィンチャーらしいゲーム性といった要素も薄い。全員がビッグマネーをつかむために頭脳戦を仕掛けているという意味では、ゲーム性といえなくもないが)
 ハーバードのサイトがダウンした時の安全対策にかかった時間(数時間)が遅過ぎるとマークが言ったり、ボートの練習に打ち込む間にウィンクルボスが出し抜かれてしまうなど旧来のスピードでは決して勝利できないというエピソードが象徴的で、全く新しい時代の到来を描いた作品でもある(もちろんオレなんかも指加えて見てるだけだけどさ・・・)。気は早すぎるが十年後観たらどう感じるかなあと思った。‘アバター’ではなく、この作品こそ今観るべき映画だろう。
公式サイト

町山智浩さんのtwitterを読むと、実際のマーク・ザッカーバーグとは違っているようだ。そりゃそうだろうなあ。むしろこんな映画が公開されるのも容認している(だよね?)ところにしたたかさを感じる。