ChicのBox set

 youtubeで70〜80年代のどちらかというとB級なダンスクラシックを漁ることが続いている(この手のやつは能天気なものが多く、ヘヴィな日常からの逃避行為であることは否めない)。
 で、その中にはもちろんいわゆる真のクラシックである曲やグループも入ってくる。
  Chic。ディスコミュージックの金字塔‘Le Freak’そしてHIP HOPの古典Rapper's Delightをはじめ引用されまくりの‘Good Times’を生んだ偉大なグループながらそういえばまともに聴いたことがなかった。ひとつの理由はChicのサウンドがあまりにも洗練されているために物足りなく思っていたことで、もうひとつはMadonnaDavid Bowieなど中心人物Nile Rodgersのプロデュース作品を80年代に嫌というほど聴かせて食傷気味だったためである。
 まあそれも昔。洋楽を聴き始めた頃に理屈抜きにカッコよかったDiana Rossの‘Upside Down’‘I'm Coming Out’がこの人たちの手によるものだと今更ながらに気づいて、ちゃんと聴いてみようと思い昨年出たばかりというBox setを購入。
 あらためて聴くととにかくNile Rodgersの<世界一気持ちのいい(←オレ命名)>カッティングにノックアウト。まったくこれさえあればいつまででも聴いていられる。サウンドとして個人的に好みど真ん中の「打ち込みが主流になる寸前のディスコミュージック」の最高の完成形をここにみる。いやそうではなくてむしろ自分の音楽観を彼らに形成されてしまったのかもしれない。
 全体を聴いて個人的にはNile Rodgersはプロデュースよりもプレイをしている曲の方が好きだなあと思いもした。80年代中盤のDuran DuranMick Jaggerのプロデュース作あたりになると新鮮味も無くなっていた。シンプルに心地よいサウンドを作るのが得意なタイプで、割合古風なミュージシャン気質の人なのかもしれない。盟友バーナード・エドワーズの急死はChicその意味で非常に惜しい気がする。また1976年に結成して、1978年にはもう‘Le Freak’を作り1980年には“Diana”(Diana Rossの上記二曲を含むアルバム)をプロデュースしその時まだ27歳。一方でChicの曲の基本的な部分は時代によっての変化はほとんど変わっていないのも面白い。はじまりから成熟したミュージシャンでその後も一貫した音作りをしている人でもある。その辺が神格化されにくく過小評価気味の理由かもしれない。
 他にBox setにはDebbie Harry(‘Backfired’懐かしかったー)やCarly Simonなんて名前も並んでいるがメジャーすぎるNile Rodgersプロデュース作は丁寧に避けられているので安心(笑)。Sister Sledgeの曲もChic同様カッコいいし、ホントに延々と気持ちよく聴ける4枚組みだ。