『きつねのつき』 北野勇作

 何らかの災厄で平和な生活が一変した町で暮らす一家を描いた連作長篇。
 まあSF的な設定が背景にあるのだが、それは読んだりどこかで検索すれば分かるのでどうぞ(笑)。個人的にはこの人の作品はそういった設定よりもシュールな空気感を楽しんでしまう。何気ない日常にぽっかり開いた底なしの陥穽、崩壊した世界で壊れながらも生き続けていく悲しみ、そんな中でも生き生きとした顔を見せる子どもたち。特に「骨」が面白かった。子どもを描かせるとSF界No.1かもしれず、将来は児童文学者として名が残るのでは。