若島×大森トークショー、『ベータ2のバラッド』

  当ブログとしては絶対外せない企画、若島×大森トークショーに行ってきた。事前の告知では《実現不可能なアンソロジーも!?》って書いてあったが、それは対談中に登場した‘失敗作アンソロジー’のこと?(ちなみにそれはやっぱりリストすら出来なかったらしく、皆様ご安心を)

 最初に各種の名アンソロジーについて、若島先生の「(癖の強い作品だけでなく)定番もバランスよく配分されたものが良いアンソロジー」という話が印象的。その後「ベータ2のバラッド」について。大森先生には「SF史改変アンソロジー」とも評されていたが、本人は事実上個人的なセレクションであることを認めておられていた(笑)。他、若島先生の「オールディスは今ひとつ」「(ムーブメントというより)作家から入って読んでいく」というようなお話が興味深い。

 で、その『ベータ2のバラッド』ですが上記の通り、個人的なセレクションであることとニューウェーヴSFを歴史的に位置づけ直すことの二つが特徴となっている。まず大好きな「プリティ・マギー・マネーアイズ」入ってるのが良い。タイトル作はディレイニーなので一読だけではなんとも言えないが、本人みたいな学生の主人公がでてくるところが可愛らしいとか、執筆当時若いのにもう歌詞をテーマにしていることが音楽に強いディレイニーらしいといったところでお茶を濁そう。ベイリーの「四色問題」は・・・。全体についてはコメント不能だが、ストレートにバロウズっぽいのにちょっと驚く。ポイントはカウパー。やはり『乱視読者の新冒険』(のカウパーの項)を読んでおいた方が良いと思う。若島先生の不思議な体験とこのアンソロジーの深い関わりが感じられ、味わいが増すと思われるからだ。

 若島先生の書く様に読書とは‘個人的な行為’で、読者がその意味が実感できないこともある。ただ時に‘秘密の回路が形成’され、その意味を実感することもある。そんな体験をまた(間接的にではあるが)追体験をすることもまた読書の面白さだと感じられる。という訳で、今後も個人的な感想をブログに書いていくお墨付きをもらったのである。≪全然違います