『トルーマン・カポーティ』『叶えられた祈り』

410216251801_1

410216252601_1

トルーマン・カポーティ〈上〉  〈下〉

おびただしい証言によりカポーティの人物像に迫る本。無邪気すぎる上昇志向とその挫折といったまさにフィクションのような人生がかいま見られる。派手好きで自己顕示欲が強い一方で南部出身のコンプレックスの強い小男の素顔がのぞいたりもする。それにしても証言する人もさることながら、話に登場する有名人まで加えると驚くばかりの多彩さである。そういう意味では実に華やかな本である。いやこんなにパーティばかりすると体に毒ですよ!<いったい誰に言ってるのやら
パーティ好きのアーティストということで、ウォーホルとどんな関係にあったのかな?と思ったら、なるほど最初はつきまとってたのはウォーホルの方なんだなあ(あたりまえか)。他にカミュコクトーの話まで出て来たりもするが、変わったところでは経済学者のガルブレイスが証言していたりする。奇妙なエピソードもある。父親を愛人として家庭から奪っておきながら、その後にも娘と交遊を保ち、手助けをする。夢の中に生きた人らしい素晴らしく地に足のついていない話である。ベトナム戦争の裏での舞踏会というのも興味深いし、70年代ぐらいのゲイ、ディスコ文化のやりすぎな雰囲気も何だかスゴイ。

410209507101 叶えられた祈り

で、結局「叶えられた祈り」でそうした社交界のゴシップをばらして自爆しちゃうわけだ。ただ未完の作であり、この本そのものは傑作とは言いがたい。ホッパーの絵は好きなんだけどね・・・。酷いゴシップの数々は、ただ散漫に羅列されているだけ。実名も仮名も混ざり、本書単独だと何がスキャンダルになったかも分かりにくいし。好奇心の強いひとは前者のインタビュー本の方も読むと分かります。カポーティ版「失われた時を求めて」を目指したという話もあるが、もちろんプルーストは読んでないので、カポーティの意図は分からない。っていうかまず「夜の樹」読まなきゃ。