『ロリータ、ロリータ、ロリータ』 若島正

 永年のナボコフ研究者をして「よくわからない」と言わしめる謎の多い『ロリータ』について、新訳にあたったわれらが文学探偵若島正先生が詳細な謎解きを行う!
 ということだけれども、本書で解説されているのは原典のごく一部。(それでも一冊の本になってしまうのだ)完全な解説本を目指しても抜け落ちる部分が出てくるだろうことから、一部について詳細な解説を加え、『ロリータ』を読み解いていく手がかりを与えようというのがこの本の目的のようだ。話法の問題あたりは、ちょっと素人(自分)には難解な部分もあったが、ほれぼれするような理知的な解読で明かされる『ロリータ』世界は緻密で実験的でしかも多重に読まれうる複雑さを有していて、とんでもなく奥深いところまで拡がっていることが感じられる。
 といっても『ロリータ』はまだ一回しか読んでいない。なので、なんだかカンニングをしてしまったような後ろめたさにおそわれるが、とにかく面白い。