DVD‘冷血’

  久々のカポーティネタである。ようやくみますた。1967年作、映画の‘冷血’。
  ダークでへヴィといった印象の強い作品である。原作に忠実に筋を追っていて、派手な演出は特にない。しかしひとつひとつのシーンが心理描写を含め丁寧に描かれ、今からみるとそれほど残虐なシーンは登場しないのだが、スリリングで息の詰まるような重さがのしかかってくる。なんといってもペリー役のロバート・ブレイクの迫真の演技が素晴らしい(後に殺人罪で起訴されたそうだ。結局無罪だったらしいけど)し、ディック役のスコット・ウィルソンも感じが出てる。缶あつめの少年と老人のエピソードもつかの間の平穏な空気感がよく出ていて、原作の詩的な一面も表現されている。
 あらかじめ犯人が捕まる気まぐれな金目当ての殺人の話だとわかっているし、あまりに正攻法なつくりなので、爽快感や普通のいい話を求める人には、2時間余のこの作品はキツいかもしれない。しかしモノクロが十二分に生かされた闇の深い映像と力のこもったつくりは重厚で、観る者をグッと鷲掴みにする(サイコ・キラーやスプラッターが当たり前になった今は逆に作れないかもしれない)。特にカポーティファンは必見だろう。

 ところで‘冷血’のDVDには昔の映画の予告編がいくつかついていた。ちょっと変な日本もの(ケリー・グラントの‘歩け走るな’)などもあって面白かったのだが。本格ミステリのパロディ映画‘名探偵登場(原題:MURDER BY DEATH’にカポーティが出演しているのを知った。確かTVで‘名探偵登場’は以前に観たことあるんだが、あのけったいな家主がカポーティだったのか。いやー知らなかったなあ。