‘ウィズ’TV視聴

 ダイアナ・ロスマイケル・ジャクソンの映画とかいうと、なんだかなあという感じがして食指がわかない(追記:わかない、じゃなくて、動かない、が正しいんだろうなあ) というのが正直なところで、ファンには失礼だが、納得いただける方も多いに違いない(実際二人がはしゃぐシーンはどうにも薄ら寒い空気が漂う。ああホントに両方のファンの方ごめんなさい)。一昨日たまたまNHK-BSでやっていた映画‘ウィズ’。いやいや何でもみてみるものだ。大傑作とはいえないけれど、全体としてはなかなか面白い興味深い作品である。
 作品はソウル・ミュージック(主にモータウン)仕立ての‘オズの魔法使い’というコンセプトで、監督は‘十二人の怒れる男’の名匠シドニー・ルメット。実際のところ評価と興行成績はこんな感じで、一般的には失敗作。いわく「その十年間での最大の失敗作の一つ」とか「これでダイアナ・ロスの映画キャリアはおしまい」とか「子供には怖すぎて、大人には馬鹿馬鹿しすぎる」だとか散々な言われようである。まあたしかにダイアナ・ロスに主演としてのオーラは感じられないのはまずは致命的。随分制作費のかかった豪華な作品で、結局回収できなかったようだ。しかしこれが肩の力を抜いてみると結構楽しめる映画なのだ。まずクィンシー・ジョーンズの音楽が素晴らしい。最近iPODで70年代のソウル/R&Bばかり聴いているので、まさにツボ。例えばPoppy Girls ThemeなんかオージェイズのUse Ta Be My Girlによく似ていて、ニヤリとさせられる。出ている人達も舞台上がりが多いのか、皆歌唱力がある。その一方で、本来正統派ミュージカルである‘オズの魔法使い’をブラック・ミュージックに転換させたため、細部までアフロアメリカンテイストになるところが最高におかしい(大魔王ウィズの造形には爆笑)。やたらと大勢のダンサーがカラフルな舞台装置の上で派手な衣装で踊ったり金のかかってそうな場面がある一方で、さまよう異世界が基本ニューヨークなので、地下鉄駅でゴミ箱が襲ってくるとかチープなテイストが目立つのも嬉しい(ラストの大魔王の話もアレだからな〜)。もちろん当時ハタチのマイケルのはじけるダンスはファンの方へ大きなプレゼントになるだろう。
 評判が悪かったのは舞台版のウィズとの比較があったせいだとも考えられる(舞台版の方が先で、そちらはブロードウェイでロング・ランとなりトニー賞も獲得)。結局のところ映画自体、独特のセンスではあるので(上記の「子供には・・・」の下りは確かに納得である)、みる人を選ぶタイプの映画だが、見落としているソウル/R&Bファンはこの怪作を是非ともご賞味あれ。