『隣の家の少女』 ジャック・ケッチャム

 悪名高い<心底いやな話>である。実に怖ろしいことに実話が元になっている。
 舞台はアメリカの片田舎、主人公デイヴィッドは美しい少女メグと友達になる。隣同士と分かって胸をときめかせるが、転居して来たメグには悲しい過去があり、隣家では辛い立場に置かれていたのだった。
 タイトル通り少女が酷い目に合うという話である。そういう意味では、これまたエスカレートする物語(もちろん『ツィス』とは話の質そのものが随分違うけど)。虐待行為自体も目を背けたくなる内容だが、むしろ行う登場人物たちの描写が見事で、読む前に予想していたのと異なる衝撃を受けた。ケッチャムは、平凡な人間達の心に潜む暴力性とそれと対峙しようとしない欺瞞を嫌というほど眼の前に突きつけてくる。そう、デイヴィッドの苦悩は我々のそれなのだ。