『ロボットの魂』 バリントン・J・ベイリー

 さてSFマガジンの特集号を読んでベイリーをもっと読みたくなって積読本に手をのばした。‘ロボット二部作’と呼ばれるベイリーのロボットSFの一作目である。
 老ロボット師によってつくられた自由意思を持つロボット、ジャスペロダス。さすらいの旅に出た彼は様々な騒動に巻き込まれながら自らに意識が存在するのか思索をめぐらせる。
 基本的にはちょっと民話風味のあるロボットもの。巻き込まれ型の主人公ジャスペロダスが奴隷になったり危険な仕事をさせられたり王様になったりする話なのでベイリーとしては割合読みやすい。レムほどコミカルな部分は多くないものの、哲学的な考察とかちょっと近い感じがある。ただ全体としてはSFマガジンの特集での作品紹介にあるように<ベイリーなりの>ロボットSF。ジャスペロダスの性格はどうみても擬人化を免れていないし、その分意識についての考察もかなりアヤしい。またベイリーの作品としても全宇宙をかけるような壮大さを欠いてもいる。しかしジャスペロダスの誕生の秘密や予想を超える陰惨な展開などやはりベイリーにしか書けない作品であるのは間違いない。そして擬人化うんぬんのようなうるさい突っ込みは別にして(<自分で言い出したくせに!)、何とも憎めないのがジャスペロダスのキャラクター。降りかかってくるトラブルだけでなく、自らもいろいろな騒動の種をまいているにも関わらず、迷いつつもへこたれず前向きで、コメディというほど明るい話ではないのだが重苦しくなり過ぎないのだ。そんなジャスペロダスは無手勝流でSFに挑み続けたベイリー自身のようでもある。というわけで、やっぱりベイリーは面白いし独特だ。まだ積読があるので折をみて読むかな。
 蛇足だが、このジャスペロダスものを途中からコメディ路線にしてシリーズ化すればちょっとした人気を得ることもあったのかななんて少し思った。でもそんな器用さはなかったんだろうなあ。