『ジェイン・エア』 C・ブロンテ

 エンターテインメント小説(ていうかSF)ばかり読んでいた身には、古典というのはなかなか心理的な敷居が高い。もともとロマンス小説にも疎い当ブログ主には果たして本書を読み通せるのかと思っていた。が、実際は非常に読み易く数日で読了出来た。
 幼くして両親を亡くした主人公ジェイン・エア。伯母の家に預けられるが、伯母には冷遇されその子供たちにもいじめられる。芯の強いジェインはやがてそこに居場所がないことを悟り、寄宿学校に行く。貧しい環境の中、ジェインは友人や恩師に支えられ家庭教師になる。彼女が雇われたのはロチェスター家。そこの主人である謎めいたエドワード・ロチェスターの信頼を得るとともに、彼女もエドワードに惹かれていくのであった。
 1847年に出版された作品。詳しくは知らないが、おそらくは後続の作品が相当手本にしただろうから、ベタといってもいいような展開がみられ、時にちょっと強引なところもなくはないが、次から次にエピソードがあって実に飽きさせない。誠実で心強い存在である恩師、恋敵の厭味なお嬢様だとかいい意味でステレオタイプな登場人物もむしろ心地よいぐらいにはまっている。また大仰な台詞回しも雰囲気があってよい。一方で全体としてしっかり現代性が感じられるのは(解説にもふれられているように)主人公ジェインの人物造形に追うところが大きい。運命に翻弄されるものの最終的に自らの意思で道を選び、男性原理には容易にくみしないのである。基本的に女性の自立を扱っているから現代人には身近に感じられる(逆に世の中が進歩していないのかもしれんな)。物語の後半キリスト教信仰に関するディスカッションがからむあたりは非キリスト教徒の日本人である当ブログ主にはやや読みづらい部分もあったが、それも一部であって、全体としてはジェインの波乱万丈の一代記をすいすいと楽しく読むことができた。名訳者のおかげも大きいのだろうね。