時の移ろい

 ファラ・フォーセットマイケル・ジャクソンが相次いで亡くなるとは。どちらも70年代末から80年代前半のグラマラスなあるいはゴージャスなアメリカの顔といった存在だった。どちらに対しても熱心なファンではなかったが世代的にいろいろ浮かんでくる。ファラ・フォーセットは62歳か。高齢とはいえないものの時の流れを感じざるを得ない。※追記 忘れちゃいかんCKBの‘タオル’にもファラが登場してた!
 マイケル・ジャクソンは洋楽を聴き始めた中学生の時、アルバム“オフ・ザ・ウォール”からのシングル‘ロック・ウィズ・ユー’が大ヒットをしていて、とにかくカッコいい曲だなあと思った記憶がある。その後“スリラー”があまりにも売れて社会現象化してしまったために、生真面目な音楽ファンほど敬遠する傾向にあったが、いい曲が多くてなかなか良質なアルバムだと思う(これだけ有名なアルバムなので、あらためてこんなことを書くとアホっぽいが)。もちろんジョン・ランディスを使うセンスも時代とマッチしていた(まだホラーやSFはメジャーなジャンルではなかったので、狙い自体が新しかったのだ)。ただ“バッド”以降になるとビッグ・ビジネスを担った重苦しさみたいなものが(もともとあったのだろうが)目立つような感じもあって、個人的にはどうも馴染めなかった。いずれにせよ、こんな感想をファンともいえないような当ブログ主が書けるのもそれだけラジオやTVから曲が耳に入ってきたからである。特にミュージックビデオ番組でマイケルがかからない日はなかった。マイケルの曲は歌謡曲のようにJポップのように流れていたのである。一方で、あまりにウェルメイドで洗練されビジネスとダイレクトに結びつきすぎた音楽、という点で評価が分かれる人でもあった。何はともあれ自分としてはソウル/R&Bを聴くきっかけを与えてくれた人物として忘れえぬ大きな存在である。
 マイケルに関してひとつ思い出したことがある。1990年代前半のこと、すっかりオトナになってしまったのにイケナイ友人にクラブ遊びを教わったさあのうずは、勢い余って仕事休みを利用して一人でNYにクラブめぐりの旅行に出かけたことがある(ひとりクラビングツアーである。元気だったのう)。その時名前は忘れたが某有名クラブ(アフターアワーズにリサリサ&カルトジャムが登場してもうすぐ明け方なのにHow are you doing tonight!といっていたのが記憶に残っている)、で夜明けごろ‘マン・イン・ザ・ミラー’がかかった。これは非常に意外で、上記のようにゲストが登場することはあっても、基本的にはハウスミュージックを中心としたヴォーカルの入っていない音楽が中心にかかるところで、マイケルのようなビッグ・ネームの一般のポピュラー音楽が流れるとは予想していなかったからである。しかも、これは例の虐待疑惑が報道されていたころだったので、ますます印象的だった。その後振り返って、おそらくこのときのDJはクラブ文化の先輩であるディスコ文化をメジャーなものにしたマイケルに変わらぬ敬意を表明したのではないか、と思った。マイケルへの幅広い支持を知った貴重な体験だった。