<幻想と怪奇> ポー生誕200周年 ミステリマガジン2009年8月号 

 夏恒例ミステリマガジンの<幻想と怪奇>はポー特集。大昔SFしか読んでいなかった頃、ポーを読んでよく分からなかった記憶がある程度だが、NHKの特集番組「エドガー・アラン・ポー200年目の疑惑」をみたりして、ようやくながら興味がわいてきた。オマージュ短編について感想。

「ポーとジョーとぼく」ドン・ウィンズロウ 授業もろくに出ない落第すれすれの主人公はポーの作品をきっかけに退職間近の老女性教師と連日ランチを食べることになる。劣等生の少年と話のわかる先生、というのも普遍的に心を動かされるパターンだな。小品だけどいいです。
「春の月見」S・J・ローザン 美術館長をしている友人が偽の仏像をつかまされた。オーナーにそのことがばれる前に、なんとか解決したい美術品調査専門探偵。偽美術品をめぐる知恵比べの話。美術商の商売とコレクター気質の兼ね合いみたいなところがポイントになっている。不勉強なんでよくあることだが、小ネタとして登場する川瀬巴水なんて全然知らなかった(wikiによると海外で人気があるらしい)。
「ネヴァーモア」トマス・H・クック ユダヤのルーツを捨てた父親とラビになった息子。疎遠だった二人は、父に死期が迫ったたため病院で面会するようになり、やがて息子は積年の父の謎について問いただすが。クックは初読。正統派人間ドラマミステリって感じ。「告げ口心臓」がモティーフとか。読まなきゃなあ。