CKBバックナンバー感想その2〜そのあと編〜

 CKBバックナンバー感想の続き。

○“Brown Metallic”(2004年6thアルバム)☆☆☆☆ このアルバムは発売後そんなに経っていないうちに聴いたと思う。とにかくめちゃくちゃクールなファンク‘Midnight Cruiser’が曲に加えて未来的かつ刹那的な歌詞もカッコよくて、大傑作バラード‘あぶく’と共にしばらく聴きまくっていた記憶がある。“777”で完成したCKBサウンドをより洗練して推し進めた感じ。ライヴでも定番の‘Barrio Chino’‘El Diablo’‘レコード’‘木彫りの龍’が入っていて、今のCKBサウンドの直接の基盤はこの辺りか。ノッサンのプログレハードなインスト‘大電気菩薩峠’、意外にハマってるキティちゃんロックンロール‘Oops!!Kitty Chang’もいい。ただ全体的にちょっと遊びの面が少なく、やや堅苦しい印象も。

○“Soul Punch”(2005年7thアルバム)☆☆☆☆ 2005年には、すっかりCKBファンになり待ちわびた新作として本作を聴く(そして初めてコンサートに行った)。CKB版マイウェイ‘男の滑走路’、コミカルなどファンク‘魂拳’、湾田釈尊ロケンロール‘逆輸入ツイスト’、マスター・ブラスターな‘京浜狂走曲’、SexyなミディアムR&B‘Sweet Soul Tripper’、ライヴでのレゲエアレンジが気持ちいい‘37℃’、CKBの日常と妄想が見事に交錯した‘Loco Loco Sunset Cruise’、アメリカへのアンビヴァレントな思いが溢れる‘American Dream’、ラテンユーモア路線の代表曲‘ロドリゲス兄弟’、ライヴの締めで使われる‘流星ドライブ’などなどCKBの多彩な要素がこれでもかと盛り込まれた欲張り盤。

○“Galaxy”(2006年8thアルバム)☆☆☆☆☆ 前作がかなり元気なアルバムだったが、本アルバムではさらに快調に宇宙まで飛び出してしまった。今聴いても異常なテンションが連続する強烈なアルバムだが、実際剣さんの精神状態も特殊な状態だったそうです。Fireball&Papa Bのラップが炸裂する‘ハマのアンバサダー’、あっと驚く三味線ナンバー‘Amanogawa’、悪いはずがないミディアムR&B‘メリメリ’と同路線ながらもう一つこっちも最高な‘ゆっくり跳ねる音楽’、中華風ミディアムファンク(?)‘混沌料理’、ノリノリサーフな‘俺たち海坊主’信也さん大活躍でライヴでのパフォーマンスも楽しい‘Honolulu BBQ’、昭和メドレーとも言える‘黒い傷跡のブルース’‘ドクロ町ツイスト’‘プレイボーイ・ツイスト’と並び、時折飛び出す笑いのセンスも不穏な狂気の名盤。

○“Soul電波”(2007年9thアルバム)☆☆☆☆☆ イきつく所までイってしまった感のある前作のあと、1年でアルバムが出るのかと心配していたが、南洋風のインスト(タイトル曲)を中心にまた新たな世界を切り開いて見せてくれたので安心で感心。その南洋趣味をテーマにして横にドリンクスタンドみたいな場所を設けたライブのセットもシャレていた。前作と比べ抑制の利いたファンクネスが目立ち、名バラード‘タオル’を中心としたやや渋めのアルバムになっているが、トロピカル高速ボッサ(?)‘Tiki Tiki Tropical Kingdom’、似非インド風ファンク‘ヒルトップ・モーテル’、個人的に本作ベストトラックのへヴィファンク‘Sunshine 888’、昭和歌謡というか不思議な懐かしさ漂う‘路面電車’、快調ながらマッドな味のあるロックンロール‘モンスター・スピード’、こちらはルースなロックンロール‘Hemi Hemi Dodge Cruising’、SGWのたゆたう歌声が心地よすぎるレゲエ‘Summer Time’、TV主題歌として知られる‘てんやわんやですよ’、ファンカデリックかジミヘンか‘Nossan's Work Out’、3年B組クレイジーケン先生のテーマ‘生きる。’と捨て曲なし。剣さんの中ではプロモーション等で不満足な部分があったようだが、自分の中では1、2位を争うお気に入り盤。

○“Zero”(2008年10thアルバム)☆☆☆☆1/2 少しは休むかと思われた2008年だったが、またきっちりとアルバムがリリースされた。記念すべき10枚目のアルバムでさらなるチャレンジをしていたのにはホント頭が下がる思い。ミディアムボッサの‘ランタン’から加速して‘湾岸線’、‘猫’で少し減速しておフレンチにカーヴ、続いて跳ねる道をモータウンリズムで‘デトロイト音頭’、エンジンが十分温まったところで‘中古車’‘夏’‘蜂’と世界一周の不思議なリズムの旅へ、南の‘島の娘’とひと踊りしたら、夜の‘人間摩天楼’をビッグバンドジャズでカッ飛ばして、名曲‘零’へとなだれ込む。というようないつも以上に曲の流れに気が使われている感じで、クラブミュージックを意識しているという意見もあった。集中ベストは‘零’だが、曲の流れを重視したアルバムだけに、今後ライヴで演奏されるのは、剣さん自身のお気に入り‘亀’、ミディアムの傑作‘Precious Precious Precious’(もっと人気が出てもいいのに)、バラードの連発セットとして(他の曲と組み合わされたり入れ替えたりして)‘珊瑚礁’‘Smile Again’‘Lookin' Your Eyes’ 辺りかもしれない。まとまりとして大傑作だけど、個々の曲で評価するのが難しいちょっと特殊なアルバムといった印象。

 CKBと出会った当初は個人的に体調も悪く音楽も面白いと思えるものが少ない状態であった。今思おうと、その頃は自分の感覚が信じられずにいい音楽というものを難しく考えているようなところがあった。CKBに感謝しているのは、そんな思い込みを解いてくれ理屈抜きで音楽を聴く楽しさを取り戻してくれたことである。それは理論ではなく、CKBの音そのものにカギがあったのだと思う。現在古いR&Bをいろいろ聴いているのもCKBの導きなのである。ありがとうCKB