『デューン 砂漠の救世主』 フランク・ハーバート

 ポウルが権力を握り恒星間帝国の玉座に着いて12年―いまべネ・ゲセリット結社、宇宙教会、べネ・トライラックスの顔の踊り手(フェイス・ダンサー)たち旧勢力は糾合してムアドディブ皇帝に対する陰謀をたくらみ、アラキスの宮廷めざしひそかにその恐るべき策略の手を伸ばし始めていた。(後略)(紹介文より)

 ということで、前作で絶大なる力を勝ち取ったポウルが、権謀術数の宮廷内で苦しむといった物語。訳者あとがきに難解と言われることがある作品のようだが、特に難解という感じはしない。持ってまわった台詞や観念的な描写についてのことだろうと思うが、メインはそれぞれの思惑が入り混じり、皇帝一族に苛酷な運命が待ちうける、といった話そのものである。持ってまわった言い回しやらは話を盛り上げる要素だと割り切って、予言があまりはっきりとした運命を見せるわけではないというのも演出だと考えれば話に集中できる。前半はその手の観念的な話が多く確かに話の進行はのろいが、後半はなかなかの急展開で、この巻も十分リーダビリティは高いんではないかな。自分には苦手の長尺シリーズものだが、これはそれなりに読んでいけそう(息子の分までは考えていないけど)。それから、メランジの位置づけがやはりドラッグ文化を色濃く反映している辺りは60年代のアメリカSFらしいなあと思ったり(著者自身は1920年代生まれで、直接的関連が無さそうな世代なのが興味深い)。