『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 ジョン・ディクスン・カー

 ミステリの古典もいろいろ読んでみたい気持ちはあり、積読していたこれに手を伸ばした。今となると警察がオープンすぎたりおおらかな展開だが、楽しめた。
 裕福なイギリス婦人イヴ・ニールは浮気をした夫ネッド・アトウッドと離婚したが、ネッドにはしつこくつきまとわれていた。二人の家があったフランスの海岸沿いラ・バンドレットで過ごしていた疲れ切ったイヴは、そこでローズ家のトビーと知り合い、たちまち恋に落ち婚約することに。結婚話がトントン拍子で進むが、ある夜ネッドが家に忍び込んで来て寄りを戻そうという。そんな中隣のローズ家の家長が殺されるのを二人は目撃してしまう。何とかネッドを追い返したイヴだが、殺人事件の容疑者にされてしまう。ネッドが忍び込んだことをローズ家の人達知られて誤解を招きたくないイヴは窮地に立たされる。
 怪奇趣味とか密室とかのイメージが強いカーだが、本作は割とあっさり味。でも伏線はしっかりハマるし意外な犯人だし、やはりいい作品だ。あと時代とか舞台設定も合っていてこうした雰囲気は代えがたいものがあるな。