SFマガジン2010年4月号

 「ベストSF2009」上位作家競作の号。いつも小説をちゃんとは読んでいないが、今回は結構興味ある作家ばかりなのでその四作を読んだ。どれもなかなか読みごたえがあった。

「ジェイクを探して」チャイナ・ミエヴィル 友を失ったロンドンで主人公は。まだほとんど読んでいないミエヴィル。商業誌に載った初めての小説らしい。雰囲気はなかなかよいが、ちょっと短いかな。あとロンドンに詳しいともっと楽しめるんだろうなあ、と感じた。
「ミサイル・ギャップ」チャールズ・ストロス 1962年キューバ危機の緊迫の最中人類に起こったこととは・・・。改変歴史物だが、ガガーリンやらカール・セーガンらが主要登場人物という著者らしい悪ノリ全開の作品。
「allo,toi,toi」長谷敏司 収監されている幼児殺人犯に対し、とある実験が行われる。脳情報をコントロールするという「あなたのための物語」のメインアイディアITPがまたまた使われている、一種のシリーズものといえる作品。これもへヴィな素材をストレートに扱った力作。終盤決して安易な結論に流れず、読後いろいろな思いが湧き出てくる。このような作品を書いていくのはエネルギーを使いそうだなあ。
テルミン嬢」津原泰水 脳内装置で能動的音楽治療を受けた女性に待ち受けていた奇妙な運命。奇しくもこれまた似たアイディアのもの。これまた作者ならではの予想の斜め上をいく話で、必読です。

 中野善夫氏の連載評論は異世界について、毎回示唆に富んでいて楽しみ。まとめてよみたい飛浩隆「零號琴」だがそろそろ読もうかな〜。