『不思議な国の殺人』 フレドリック・ブラウン

 大作家なんけどまだあんまり読んでいないので、日頃からもっと読まなきゃと考えている人。これはミステリ。
 平凡な地方都市カーメル市で23年間週刊紙を発行してきたドック。売り上げに特に問題はなかったのだが、一度でいいから特ダネをモノにしてみたいという思いがあった。ある日そんな彼を巻き込んだ奇妙な殺人事件が・・・。
 題名通り「不思議の国のアリス」に絡んだ事件が起こる話で、平凡な地方都市の日常が次第に狂いはじめていつのまにかエスカレートして入り組んだサスペンスになっていく手際がお見事。アリスに詳しければより楽しめるだろうが、当ブログ主のようにあまりアリスに詳しくなくても問題なく、リーダビリティは高い。穏やかな地方都市にあれよあれよという間にひどい事が起こっていくことで、序盤と終盤の印象に落差があるのには多少違和感がないこともない。また少々強引な展開もある。ただ基本的にストーリーテラーぶりはいかんなく発揮されていて、歴史に残るような大傑作ではないが、肩が凝らずに楽しめる一作である。