『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』 鏡明

 なんと30年以上も続いている本の雑誌のコラム。
 SF作家・評論家として有名だが、本業が広告ディレクター(のえらいひと)だと知ったのは割と最近。当然SFの話が多いので以前からよく読んでいた気はする。いわゆるオタク目線ではない、また明快な論旨で示唆に富んだコラムである。SFに限らず、誰もあまり目を向けないB級ジャンルフィクションを読む喜びをこれだけきちんと書いている人はおそらく多くはない。
 ただピックアップされた本書では、様々な鋭い指摘がところどころあらわれては、その輪郭をなぞっただけで終わる感じがあってもどかしい。まあもともとがそういう感じの連載である気もするが。これまでの年間SFベストはやっぱり載せて欲しかったなあ。残念。