『豚の戦記』ビオイ=カサーレス

アルゼンチンの作家。ボルヘスとの共作でも知られる。今回初読。

主人公はイシドーロ・ビダルは初老の男。仲間と平凡な日常を送っていたが、ある日若い連中が集団で老人を襲うのを目撃する。

老人と若者の戦争、という話(それだけではないけど)。個性的な登場人物をめぐる騒動が描かれ、特に後半リーダビリティが高い。ただ老人がパワー全開で対抗するという(近年よく映画であるような)活劇ではなく、彼らは逃げ隠れしている感じ。解説を読むとアルゼンチンの世代対立(書かれたのは1969年)がベースにあるようで、それを戯画化した作品といえそう(解説では本作と直接関係のないスペインの菜種油による油症と政情不安の話も書かれていて興味深い)。というわけで、全体にどうしても重苦しさが感じられる。また主人公は老人に対する嫌悪感を訴える場面もあり、執筆当時50代後半だった著者の老いへの恐れも見える。終盤は多少意外な展開だったな。

著者の他作品では、SFっぽいらしい『モレルの発明』が気になるなあ。