80年代HR/HMアルバム(多分)二十番勝負 その?1982〜85年

 この辺りはリアルタイムで聴いたものが多い。

6.“Screaming for vengence” Judas Priest(1982年)
 鋲つき革ジャンで腕振り上げてるいかにもアヤしい男がフロントマン(Rob)。このバンドもメタルのパブリックイメージを決定したなあ。閑話休題、友人にすすめられて聴いてすぐ「なるほどメタルもかっこいいなあ」と思ったくらい非常に分かりやすく完成度が高いアルバム。この後の数作も聴いたけど、やっぱりこれが1番かなあ(アルバムによってはRobのテンションが高過ぎてついていけないこともある)。Judasのアップテンポの曲は歯切れがいいんだけど、特にYou've got another thing comingは適度なタメもあって好き。


7.“Restless and wild” Accept(1982年)
  まだスラッシュメタルなどというものがあることを知らぬ時代、とにかく速いメタルがある!ということで話題になっていたのがドイツのAccept。1曲目Faster as a sharkには当時度肝を抜かれたなあ。しかもおおよそリードボーカルとは思えないブサ男Udo Dirkschneiderがひしゃげた声で歌うもんだから・・・(ちなみにこんな人↓最後は最近)
Imagesudo

Oldudopic

Recentudopic

今聴いてみると他の曲は割と普通のメタル。最後の曲なんか顔に似合わず(<大きなお世話か?)ロマンティックな歌詞だったりする。


8.“Metal health” Quiet Riot(1983年)
  ルックスもさほどよくないし、別に垢抜けた音でもない彼らがあんなに売れたのは前に所属していたRandy Rhodesの追悼効果だけというわけでもなく、当時の状況とSladeのカヴァーというセンスがキャラクターとピッタリあったからだろう。生き馬の目を抜く厳しいポピュラー音楽の世界でもこんな幸運に恵まれるバンドもあるのだなあ。元々斬新とかいうタイプではないので、今回聴き直しても特に印象は変わらない。不思議とその幸運を一緒に喜んであげたいような一所懸命な音なのだ。が、その後の彼らの運命は必ずしも明るいものではなかったようだ。しかしRudy SarzoってアニメタルUSAのメンバーなのかキューバ移民の苦労人でベーシストでアニメ3Dクリエーターとしても活躍中ってもう訳が分かりません(笑)。(アニメに関するインタビューあった)

9.“Thunder & lightning” Thin Lizzy(1983年)
  Thin Lizzyの全盛期というともう少し前のはずで、最後のスタジオアルバムである本作の後に解散し、しばらくしてリーダーのPhil Lynottは亡くなってしまうということから代表作というより最後の輝きという印象の作品。しかも本来Thin LizzyはPhilの渋い低音ボーカルとツインリードのハモりが持ち味で、本作は新加入John Sykesのメタリックなギターが中心ということで内容的にも本筋っぽくない。でもこれがこのバンドの聴きはじめなんだよね。遡って聴いたChinatownやRenegadeは良いとか悪い以前に印象が薄い感じで、メタル路線で勢いを取り戻すことに成功したものと思われる。改めて聴き直してみると結構キーボードも目立っており、そのDarren Whartonは地味の上記の2作品にも参加しているのだが、ギターが派手に活躍することになり相対的に力を発揮しやすくなったのではないか面もあったのかな。70年代のThin Lizzyもちらほら聴いていないものがあり、今度聴いてみようかなあ。


10.“1984” Van Halen(1984年)
 ベタだけど1984年といえばコレしか思いつきません(笑)。元々世評の高かったEddie Van Halenがキーボードを大胆に使用した音作りで見事に時代とシンクロし全世界の聴衆の心をガッチリつかみ今に至るまで「この年の顔」的なアルバムになっている。本作のハイライトはJumpではなくPanamaのミュージックビデオ(当時のプロモーションビデオ)。アメリカ西海岸のロックの明るい魅力が凝縮されている。2枚羽のクラシックなプロペラ機が遠くからやってきて通過する映像からカッコいいイントロが入る瞬間は80年代のアメリカロックの最も幸福な瞬間かもしれない。まさか稀代のパフォーマーであるDave Lee Rothがこの後すぐに脱退するとは思わなかったが、あまりに幸福過ぎる時を迎えてしまったからなのかもしれない。(彼のEat'em and smileは悔しさからか超ハイテク軍団を揃えた上に見事な出来で、来日公演でも最高のエンターテイナーぶりを見せつけてくれたんだけど、後から振り返るとどうしても「よく頑張りました」感が漂ってしまうんだよなあ。あっ、戻ったりしていることは知ってますよ為念)。低音系のボーカルは追い出されやすいのかな。Iron MaidenのPaul、ここのDave、AC/DCのBon Scott・・・<Bon Scottはちょっと事情が違うぞ




11.“Heart” Heart(1985年)
 ボーカルのAnnとギターのNancyのWilson姉妹を中心としたグループで女性ハードロッカーの草分けといえると思うが、商業的にもこのアルバムで大成功を収めた。本来もっとハードな音だったと思うが、このアルバムでは同時代の「やれば必ず当たる」状態のポップ路線ロッカバラードを入れて女声ボーカルという特徴とも相まってThese dreamsと共に爆発的にヒット。というわけで、今聴くとちょっと売れ線に寄り過ぎかなあと思わなくもないが、このヒットがその後も活動を続けることを可能にしたのだろう。現在も活動しているようで2002年のJupiters Darlingもようつべで聴いてみたが、アコースティックがフィーチャーされてなかなかいい。ちなみに細身で金髪を振り乱しギターを弾くアクションがカッコいいNancyはいいプレイヤーではあるが、この時期にバンドのギタープレイを支えていたのはHoward Leeserだと『ギタリスト大喰らい』に書いてあった。何となく信憑性が高そうなのだが、まあ多少の演出もこの世界では一種の好プレーといってもいいのだろう。これまた全く関係ないがNancyの元夫はCamern Croweなんだなあ。



12.“Spreading the disease” Anthrax(1985年)
 80年代はじめまだスラッシュメタルという言葉が知られていなかった(いつ出来たんだろう?)。オレの周囲はかなりコアなメタルファンが多かったのでスラッシュメタルの原点ともいわれているVenomなんかは聴かされていたが(よく分からんかった)、その後四天王といわれ代名詞とされているMetallicaAnthrax、Slayer、Megadeathの中で自分の周囲では最初に話題になったのはこのAnthraxのFistfull of metal。掟破りのスピードの上にいかにもアンダーグラウンドな悪趣味全開のジャケットもボンクラメタルキッズたちの心を捕えたのだった(笑)。いわゆる四天王のうちMegadeathはほとんど聴いたことがないのだが、これらの中で一番ノリがいいのがAnthraxと思う。徹底的に速度を追求して聴く方を圧倒する、という方向ではなく速い中でもあくまでもファンをノらせようというのがこのバンド。後にHiphopに接近するのも当然か。