底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間』 町山智浩

 同じちくま文庫の『USAカニバケツ』が面白かったのでこれも読んだ。
 『カニバケツ』以前の、2000〜2004年のエッセイ。1997年に住むようになったアメリカ社会・時事ネタで基本的に内容は共通するものの、911テロあたりから移住当初に感じられていた自由な気風が失われていくことに異議を唱えるところが多く、ややシリアスな社会ネタが目立つ。それだけに著者書物比較では少し重め。でもあくまでシャレのめして諷刺していく姿勢が貫かれているし、本書も情報満載のお徳用文庫に仕上がっている。アメリカの夢そのもので少し背筋が寒くなるシュワちゃんプライベート博物館(P171〜)、異常なチャレンジ精神のNFL選手の悲劇(P242〜)が印象に残るエピソードだった。
 ちなみに幅広い話題を網羅する著者も今一つスポーツについては熱が薄い気が以前からしていたが、例えばNFLで司令塔たるQBに黒人選手が少ないことについて白人の上層部が黒人QBを育てようとしていない可能性に触れ「いくら黒人が多くても実は少数の白人のもとで支配されている、という構造はNBAメジャーリーグにも共通するのだが、奴隷制を連想させてイヤな感じだ。」(P193)と書いており、その辺にあるのかなあと思った。