『暗渠の宿』 西村賢太

例によって藤澤清造全集出版を目指す‘ぼく(貫太)’の短篇(私小説以外のものは無いのかな?)。さすがに安定した面白さ。
「けがれなき酒のへど」 デビュー作。既に作者のスタイルが完成している。次のタイトル作もそうだが、藤澤清造に対するシンパシーのあり様がなかなか興味深い。
「暗渠の宿」 月並みだが、平成の時代に古典日本文学的な世界が広がるところになんとも不思議な魅力がある。舞台となっている上野駅前の古書店は行ったことがあるので分かる。たしかに藤澤清造のようなマイナー作家の掘り出し物がありそうな雰囲気があったな。